商工会・商工会議所でのセミナー実施について思うこと
先日、商工会でDX活用セミナーの資料を作成、講師をさせていただきました。
無事に終了し、アンケートは取っていないものの、参加者や商工会職員の評価は悪くなかったと思います。
そのあと、別の場所で行われた別の講師によるに似たテーマ「IT活用セミナー」の配布資料を見る機会がありました。
資料自体は興味深いものでしたが、一方でターゲット設定については間違っているなと感じました。
IT、DXともに難しいセミナーテーマだと思っています。
例えば以下のような難しい要因があります。
- 横文字・カタカナ・略語など専門用語が非常に多く、専門用語の海にのまれた参加者が混乱、あきらめやすい
- わかりやすい説明が難しく、参加者がセミナー内容を呑み込めないまま、話が進みやすい
- 参加者の知識レベルも求めているものも様々
- 知識提供型の一方的なコミュニケーションになり、コミュニケーション不足に陥った参加者に飽きられやすい
加えて、商工会・商工会議所特有のセミナーの難しさとして以下のことがあります。
- 参加者の業種が絞り切れない
- 参加者が経営者、従業員などで関心が変わる場合がある
- 企業規模によって関心事項が変わる場合がある
- 年齢層が様々(20~70歳代)
- 基本的には少人数
- セミナーテーマが苦手だから話を聞きたいという参加者も多く、セミナーテーマの知識を持っているとは思ってはいけない
- 知識を持っていても、正しく理解している、正しく使えているとは限らない
- 様々なターゲットを想定すると内容が多岐にわたり、一つ一つを丁寧に話すことが難しかったり、話す時間が無くなる
先の「別の場所で行われたIT活用セミナー」で感じたのは、上記の幾つにも違反しているなと感じました。
綺麗な資料で、同業者からの受けは悪くないと思いましたが、参加者の知識レベルを高く見積もってしまった、流行語を多く入れた、簡単に取り入れられる実例を入れてなったなどマイナス印象も多くありました。
ターゲットが不特定多数になる場合は、知識が一番低い人に向けて話を組み立て、参加者が体験済であろうことも話してYES、うんうん納得というを肯定感を積み重ねて、この人は分かっているなぁ~、この講師の話は分かりやすい、というイメージを埋め込むのも必要です。
また、白書や公共機関などが公開する資料をそのまま使うのではなく、公的資料を講師の中に取り込み、ポイントを絞り込み、わかりやすく、身近な例を交えるなどの、資料の変換なども必要になります。
さらに、講師の経験を踏まえたり、独自の視点として時代背景、話の俯瞰、参加者が誤りやすいシーンの指摘なども加えてオリジナル性を出す必要もあります。
参加者にとっては、すべて新しい情報提供である必要がなく、話が納得でき、参加者個々人で、セミナー時間の10~30%ぐらいの内容が有益な情報提供があれば満足します。
ほかにセミナー内容を他人事ではなく自分毎にするための質問やワークなども好まれます。
質問やワークは、参加者の体験があるかどうかの挙手、選択肢が明確で答えやすいクローズドクエスチョン、頭を使って考えるオープンクエスチョン、他の参加者の考え方を知る情報共有などがあるとよいと思っています。
商工会・商工会議所向けのセミナーは本当に難しいですが、ターゲット設定はセミナーの肝の1つです。
ターゲット設定を誤ると講師側にとっても次のセミナーの話がなくなります。
「別の場所で行われたIT活用セミナー」は、笑いごとや他山の石ではなく、今後の自分への戒めでもあったので、記事にしてみました。