中小企業にも経営コンサルにもIT知識が求められる時代
私は、仕事と趣味の両面で、クラウド、IoT、AI、FinTech、ドローン、VRなどを調べたりすることがあります。
IT開発ができる経営コンサルタントを名乗っているため、単に技術動向を調べるだけでなく、モノによっては、私自身で使ってみたり、作ってみたりすることもあります。また、中小企業診断士として、中小企業の事例を調べることもあります。
こういったことを調べれば調べるほど感じるのが、中小企業間のIT格差です。
2017年6月時点で、国は、モノづくり補助金、IT導入補助金の補助金を通じて、中小企業のIT化を推し進めています。
汎用的なサービスについては、大手企業が中核に開発・営業を進めていますが、その一方で、農業・工業・商業・サービス業などの中小企業が、クラウドサービスを導入したり、更には自社に特化したシステムを自作して導入している例も増えてきています。そして、システムの導入(または自作)により品質・コスト・納期の改善、売上高の増加などにつなげています。
こういった中小企業は、当然本業はITではなく、ITに詳しい人が1人いるかどうかといったといった状況から、システムの導入や自社開発に着手していることが多いです。そうして、数万~数百万円レベルの投資で自社の改善しています。
これは、ソフトウェア面で、クラウド(PaaS・SaaS)の進展による無料・低価格や操作性の容易化、ハードウェア面で、タブレット端末や、センサー、ラズベリーパイ、ドローン、無線LANなどの小型化・低価格化・流通促進・操作性の容易化などが進んでいるからです。
すべての業務でIT化が必要だとは思っていませんが、最近、AIによる採用をやる企業が出てきた事には少なからず驚かされました。
採用は定型化(≒数値化)しにくい部分もある業務です。
1年前に出版された書籍には「近い将来、人事・評価でAIが使われるかもしれない」という記事ありましたが、まさか翌年にAI採用を活用する企業が出てくるとは思っていませんでした。
採用など非定型な業務がディープラーニングやアクティブラーニング、自己学習能力を持つAIの登場で代替されてきたということは、他の業務も代替の可能性も出てきたということです。ということは、これまでと同じではAIに使われる側に回ってしまうこともあるということです。
現在でも、販売促進や、業務の効率化、コミュニケーションなどの手段の1つとして、Facebook・Line、WordPress(によるHP開発)、Google Apps、クラウド会計、ネット銀行の活用などのインターネットサービスの導入を提案することはあります。これらは、導入も操作も簡単で、企業の課題にもこたえられるため、メリットは十分あります。
しかし、先に書いた中小企業は、更に一歩踏み込んで、PaaSレベルのクラウドを使い、ハードウェアと組み合わせ、IoT的な使い方をしています。内容や規模にもよりますが、ノウハウの見える化さえでき、やる気さえあれば、自社専用のクラウドサービスの開発・導入も難しくはありません。
現在の日本は、外需拡大により、(大企業は)景気回復・長期の継続中だといっています。しかし、中小企業では、需要停滞・競争激化・人手不足などの状況が続いている業種がたくさんあります。こういった中、パッケージされたクラウドサービス導入や、自社開発まで見据えたIoTシステムの開発に取り組む中小企業も少なからず出てくるでしょう。しかし、一方で、旧態以前のIT導入にためらう企業も多く残ることでしょう。
中小企業の導入が進まない理由として、「導入効果が分からない」「IT能力を持つ人材の不足」、「業務が多忙で手が付けられない」といった理由でIT導入をためらう企業も多くいますが
しかし、導入をためらっている企業が、導入をためらわなかった企業に競争力で劣ってくるのは目に見えて明らかです。
IT導入をためらっている企業を動かすには、まず情報を伝達する人が必要で、次にそれを推し進める役割が必要だと感じます。
これらの役割を担うのは、今後の経営を考えることができる経営コンサルタントだと感じます。
このため経営コンサルタントは、以前にもましてIT知識の習得が必要です。
企業単体ではできなくても、要件を整理して開発まで繋げられるコンサルタントと組めば、システムの選定から導入までの難易度は、非常に低下します。
現在は、システムの導入や新規開発においても、コスト面でも非常に安価になっています。ものづくり補助金や、IT導入補助金などを活用できるのであれば、自社の出費は、本当にごくわずかになることも多いです。
※補助金にはコンサル料を含めることもできますし…。
そしてこういった取り組みを行うことで、販路開拓、業務効率化、コミュニケーションの円滑化に加え、QCD(品質・コスト・納期・数量)などの改善による競争優位・差別化にも繋がります。
今回の記事は、少し大げさに書いている感じる面もあるかもしれませんが、中小企業も、中小企業を支援する立場の経営コンサルタントも、一度考えてもらいたい内容だとも感じます。
(中小企業診断士 布能弘一)