人間関係を重んじる人とつきあいたい
最近、「課題解決能力よりも人間関係を重んじる人とつきあいたい」と考えることが多くなりました。
能力主義がはびこる世の中
以前の私は、能力主義に偏重していたと感じます。
例えば、日本の漫画やアニメなどのヒーローものは、能力が高いことが前提に話が進められます。
私が長年所属しているIT開発業界でも、課題遂行ができる能力を重んじる傾向があると感じます。
現在付き合いの多い中小企業診断士の間でも「専門能力」という言葉をよく聞きます。
これらは人間関係よりも課題解決を重視した考え方です。
これまで私もその中にドップリと浸かっていました。
もちろん、能力がなければ仕事になりません。また、課題を解決できなくてはお客様からお金を払ってもらう価値もありません。
けっして能力や課題解決を軽視しているわけではありません。
さらに言えば、人格を全く無視している人が多いわけでもありません。
しかし、最近は能力主義に疑問を持つようになりました。
最大の問題 – 人間関係の構築よりも、課題の遂行に価値を置く文化
私が、こんなことを考え始めたのは「問いかける技術――確かな人間関係と優れた組織をつくる」という書籍を読んでからです。
本項目のタイトルは同書籍から取らせてもらいました。
この本では、アメリカに「人間関係の構築よりも、課題の遂行に価値を置く文化」があることについて警告しています。
また、書名は忘れてしまいましたが、ある書籍でこんな話がありました。
長年、妻は通院しており、A先生のもとで診療を受け続けてきた。通院の際には、私も一緒に付いて行く。
A先生は、病気に関する診療だけでなく、家族、趣味、休暇の過ごし方など様々な聞いてくれ、旅行に行った次の診療では、どんな様子だったかなどまで聞いてくれた。
私たちは、A先生を友人のように感じて信用してきた。
あるとき、A先生が急な用事で休暇を取り、別のB先生に診療してもらったことがある。
B先生は、世間話など一切なく、淡々と妻の病気のみ診断し、生活での一般的な注意点のアドバイスをして、処方箋の手配をするだけだった。
私たちは、とても不安になった。
もしかしたら、A先生に比べてB先生の方が能力は高いかもしれません。
しかし、多くの方は、通院の際にはA先生を選ぶと思います。
私も似たことを経験したことがあります。
ある医院で、私の長年の主治医であった高齢のX先生が亡くなり、新しいY先生に切り替わった後、しばらくして別の医院に通うことになりました。
その決断の決め手は、「X先生に比べて、Y先生は流れ作業のように診療・処方をしており、私を尊重してくれていない」と感じたからです。
X先生は、一人当たり5分ぐらいの診療時間で、かつ薬などの取捨選択をしてくれました。
Y先生は、一人当たり2~3分ぐらいの診療時間で、かつ、こちらからお断りの言葉を伝えないと、薬の種類や量を増やしたり、私が欲しいと感じていた薬を変える先生でした。
個人的な感想ですが、人間関係よりも、課題解決やそのための能力を優先する人は好きではありません。
「課題解決を優先する人は、能力や効率性は重んじるが、相手の気持ちをくみ取らないことが多い」と感じています。
つまり、人間関係の構築を軽視していると感じます。
相手を尊重する
はじめて支援した方から言われて、嬉しかったことがあります
「布能さんは、自分の話を聞いてくれるので話がしやすい」という話でした。
このとき、何も特別なことをしたわけではありません。
他の人が支援先のHPだけを情報検索したり、電話やメールで簡単にヒアリングを済ませる仕事を、直接話を聞きに行き、課題以外のことについても相手の話を聞いただけです。
そして何よりも、「相手を知りたい、役に立ちたい」という想いを込め、相手との人間関係を築くことに注力しました。会話スキルも使ってはいましたが、それ自体は本質ではありません。
その結果、本来ヒアリングだけのつもりで訪問したのですが、仕事がその場で確定し、さらに「今後も付き合っていきたい」という言葉を頂きました。
課題解決よりも人間関係を重んじる人とつきあいたい
医者とコンサルタントの仕事に共通していることとして、属人性が高く、課題解決のための能力が求められますが、結果がでるまでには時間がかかるということがあげられると思います。
個人的な意見ですが、こういった仕事をする際に、課題解決を重視して片手間でやってしまう人と、時間を掛けて人間関係を築く人のでは、その後の結果に大きな違いがでてくると感じます。
そんなわけで、最近は、一定以上の能力があれば高い能力の持ち主かどうかまでは気にしません。
それ以上に、その人が課題解決を重視する人か、人間関係の構築を重視する人かを私自身の付き合いの基準のひとつとしています。
そして人間関係の構築を重視する人だとわかれば、長く付き合いたいと感じています。
先にも書きましたが、現代は課題解決ができる能力を重視する時代です。
進化の速度が速い時代であり、今後は、ますます課題解決ができる能力を重視するようになっていくことでしょう。
そういった意味では、私の考え方は時代に逆行しているかもしれません。
しかし、私としては、ここはゆずれない一線のひとつだったりします。
(中小企業診断士 布能弘一)
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☆☆執筆後記☆☆
ここ数日、4日連続である研修に参加していました。
長期間の研修であり、まだまだ続くのですが、とりあえず1週目は終了です。
いつもと違う環境で、いつもと違う人たち(診断士も多かった?)と、いつもと違うことをやる。
こういった研修に何度も参加できるわけではないですが、こういった経験もいいですねぇ~。
色々な方の視点、考え方を勉強させていただきました。