成長戦略を考えるアンゾフの成長ベクトル

以前、「戦略のレベルについて」という記事を書きました。
今回は、その中でも、企業戦略(=成長戦略)を見直す際に使われるフレームワークである「アンゾフの成長マトリクス」を紹介します。

 

アンゾフの成長ベクトルとは

アンゾフの成長マトリクス(アンゾフの市場=成長マトリクス)は、イゴール・アンゾフ氏の著書「企業戦略論」の中で提唱した経営診断のツールです。
自社の製品・サービスが、現在どの立ち位置に該当するか分析し、今後どのような立ち位置で展開をするべきかという戦略を考えるときに用いられます。

 

市場浸透戦略(既存市場 × 既存製品)

現在の市場に対して、現在の製品・サービスを浸透させる戦略です。
主に広告・宣伝などの営業活動を通じて、既存の市場に自社の製品・サービスを浸透させ、市場でのシェアを拡大を図ります。
経営資源(ヒト・モノ・カネ・情報)を多く必要としないため、まずは考えていきたい戦略です。
既存製品の認知度が低いなどの要因で、市場シェアの拡大の余地が見込める場合には、この戦略を考えていきます。

新市場開拓戦略(新市場 × 既存製品)

現在の製品・サービスを用いて、新たな市場を開拓していく戦略です。
主に営業活動を通じて、既存の製品・サービスを未開拓の市場(新たな顧客層、新たな地域、新たな使い方が提案できる分野)に展開していきます。
経営資源(ヒト・モノ・カネ・情報)でみると、市場浸透戦略と比べ、新市場の開拓にかかる費用が多くなります。
既存市場の飽和などで市場シェアが伸ばせない、他県や海外などの別の市場に売上高を伸ばす機会がある場合に、この戦略を考えていきます。

新製品開発戦略(既存市場 × 新製品)

現在の市場に対して、新たな製品・サービスを開発・投入していく戦略です。
現在の市場にある顧客ニーズに対して、新たな製品・サービスを研究・開発する場合もあれば、大きさ・量・色・デザイン・品質(高級・低級)などの既存製品の改良した製品・サービスを展開することもあります。
経営資源(ヒト・モノ・カネ・情報)でみると、新たな製品・サービスの開発投資や、開発した製品・サービスの宣伝広告費などの費用が掛かるため、市場浸透戦略や新市場開拓戦略よりも実現の難易度が高くなることが多くなります。
既存市場に顧客ニーズがあることが判明し、それに対応できる技術力や生産力、販売力、資金、人的余裕などの経営の体力がある場合に、この戦略を考えていきます。

多角化戦略(新市場 × 新製品)

新しい市場に新たな製品を開発・投入していく戦略です。
製品・サービスの開発と市場の開拓を同時に行うのでシナジー効果が得にくく、これまでの3つの戦略(市場浸透戦略、新市場開拓戦略、新製品開発戦略)と比べ、経営資源(ヒト・モノ・カネ・情報)を多く使うことになり、リスクが高くなる傾向にあります。
一方で、「同業種の市場縮小が見込まれる」「金銭面、人材面で余裕がある」などにはこの戦略を考えていきます。

なぜ経営コンサルはアンゾフの成長マトリクスを重視するのか?

多くの場合、コンサルタントは、まず「SWOT分析」などの現状分析を行い、診断先の企業の内部要因(強み、弱み)と、外部要因(機会、脅威)などを分析していきます。
その後、「問題→あるべき姿→課題」を設定し、現在の企業の外的要因・内的要因をもとに新たな展開を考えていきます。
この際に、「外部要因=市場」と「内部要因=製品・サービス・技術力など」と切り分けて、今後の戦略を立てると、「問題→あるべき姿→課題→戦略→…」と論理的な提言がしやすくなるためです。
このため、アンゾフの成長マトリクスは使い勝手の良いツールとして重宝されています。

 

(中小企業診断士 布能弘一)

 

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